監修:NTT東日本 東北病院
院長 佐藤 譲 先生


災害時に困らないために
災害時に備えて

大地震など、地域全体を巻き込む規模の災害が起きた場合、災害直後は医療機関も薬局も被災して機能が停止するため、自分の身は自分で守るという覚悟が必要になります。特に毎日のインスリン注射が必要な1型糖尿病患者さんの場合、インスリン不足は命に関わる問題です。日ごろから医薬品など必要なものを災害などの緊急時用に備えておくことは、自分自身を守ることであり、また災害時の不安を軽減してパニックにならない心の準備にもつながります。

最低1週間分の備蓄をする

災害直後には、いつも通っている医療機関からのインスリンや治療薬の補給は期待できません。災害後すぐに救援物資が届くようになっても医薬品まではなかなか手が回らず、避難所などに派遣される医療班もケガや感染症、およびストレス対策が主な作業で糖尿病治療には対応しきれないと考えていいでしょう。そのような状況を考えると、最低でも1週間分の医薬品や消毒用品などを常に家庭に備蓄しておくことが大切です。この場合、インスリンや治療薬の使用期限にも注意して、2〜3ヵ月ごとにチェックして、期限が切れそうなものは入れ替えるようにしましょう。また、せっかく備蓄していても災害時に壊れてしまっては意味がありません。注射器などは壊れないように保護材などで包む、備蓄袋への入れ方を注意する、などの配慮が必要です。

携帯用キットを作り、持ち歩く

学校や職場にもある程度の備蓄をし、さらには外出時に被災したときのことを考えてインスリンや治療薬、簡易血糖測定器、ブドウ糖、飲料水など必要最低限のものをコンパクトにまとめて常に携帯する習慣を身につけましょう。

心の準備をする

日ごろから災害時、緊急時のいろいろな状況、すなわち医療機関に頼れない、注射器が壊れて使えない、予備の針がなくなった、などの状況を想定して、自分がどうすればいいかを考え、医師や医療スタッフとも話し合っておくという、心の準備が大切です。

災害時用の非常用袋を用意して、
入れておくもののチェックリストを作る

インスリンや治療薬など、何が必要かは、一人一人異なってきます。医師と相談しながら、日ごろの治療内容に照らして、以下のチェックリストを完成させてください。

1)糖尿病関連

2)その他の日常生活に必要なもの

処方薬品名を覚えたり、リストを所持する

救援が来るようになって、治療薬の手配を依頼するとき、自分の処方されていた薬品名をすぐに言えれば迅速な手配が可能になります。お薬手帳が役に立ちます。ご本人だけでなく、家族の方も使用薬リストのコピーを所持したり、非常持ち出し袋に入れておけばより安心です。携帯電話のカメラにお薬手帳の薬を写しておくと役立ちます。

シックデイルールや治療薬の名前を書いた紙を作り、非常用袋に入れておく

普通の生活の中では分かっていることでも、緊急時にはなかなか思い出せなかったり気づかなかったりします。シックデイのときに自分でできることを書いた紙や、いつも使っている治療薬の名前を書いた紙を用意しておくと便利です。

病院や主治医などとの連絡方法を相談する

通院中の医療機関に緊急時の対策を確認し、連絡や対応の方法を事前に医師や医療スタッフと相談し、決めておきましょう。

災害が起きたら
避難所では自分が糖尿病で、毎日の治療が
必要であることを申告しましょう

避難所生活ではまず、糖尿病患者であることを申告することが大切です。インスリン注射などは周囲の理解があれば注射時のストレスも軽減しますし、労働に関しても低血糖を避けるための調節が必要な場合に相談しやすくなります。申告する相手は、周囲の人、リーダー的立場の人、医療班などです。
このとき、糖尿病について次のような点を説明すると誤解を避けることに役立ちます。

糖尿病は人に感染することはありません。

毎日治療を続けることが必要です。

血糖値が高くなりすぎると、意識を失ったり、命に危険があります。これを避けるためには血糖をコントロールする必要があります。

インスリン注射や治療薬の影響で一時的に低血糖になり、もうろうとしたり意識障害を起こすことがあります。

災害時で食事量が足りない場合には、低血糖を起こさないように、長時間の労働・活動は避けましょう。

災害の影響で、足場が悪くなる時は、手足に傷を作らないように注意しましょう。

意識がない状態になっていたら、すぐに医療班に連絡してください。

インターネットなどで情報収集を

インターネットを使える環境であれば、災害時には日本糖尿病学会( http://www.jds.or.jp/ )や日本糖尿病協会( http://www.nittokyo.or.jp/ )のホームページにおいて、周辺地域で連絡可能な医療機関など、災害時用の情報が公表されるので活用してください。また、避難所や身近な場所にいる患者間で情報ネットワークを作ることも心の支えになります。ただし、患者間での情報ネットワークだけに頼ると、情報が正しく伝わらずに不安や誤解を招くことがあるので、できるだけインターネットや医療班、近隣の医療機関で、入手した情報が正しいかを確認するようにしましょう。

一人で悩みや不安を抱えずに周りに
相談できる人を見つけましょう

孤立は不安を強め、不安が強まると精神的に追い詰められてますます孤立した気分になってしまいます。患者間だけでなく、周囲の人とも交流をはかり、周りに相談できる人がいる環境を作るようにしましょう。

ケガや風邪に注意する

糖尿病患者は免疫力が下がりやすく、ケガが治りにくかったり風邪などの感染症になりやすく重症化しやすい傾向があります。ケガに注意し、なるべく身の回りを清潔にして寒さ対策にも注意して風邪などをひかないようにします。万が一ケガをしたり風邪などの異常が現れたら早めに医療班や医療機関に相談して、自分が糖尿病であることを説明して、重症化しないようにきちんと治療を受けましょう。

適度に体を動かす習慣をなくさない

災害時に配給される食事は炭水化物(糖質)が多く、食後の血糖値が高くなりがちになります。食後は意識して適度に体を動かすようにしましょう。また長時間、体を動かさないでいると、静脈に血栓ができて肺の血管が詰まる「エコノミークラス症候群」を起こしやすくなります。散歩や屈伸運動、軽いランニングなどをして、体を動かす習慣を維持しましょう。ただし、食事の全体量が不足のときは食後以外の血糖値は低くなりがちです。こまめに血糖値をチェックして、インスリンなどの量を調節したり、激しい労働、運動は避けるなどして調節するようにしましょう。

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