監修:東京女子医科大学 糖尿病センター
センター長 内潟 安子 先生


三大合併症
糖尿病の三大合併症(細小血管症)

細い血管は末梢神経や臓器内に血液を運ぶ役割を持っています。高血糖が長く続くと細小血管が障害を受けて、血管が詰まったり血液が漏れるようになります。このため、細小血管から栄養を補給されている末梢神経や細小血管が張り巡らされている組織(網膜や腎臓など)に異常が現れます。細小血管症の発症・進行を抑えるにはできるだけ正常に近い血糖コントロールが大切です。

参考:日本糖尿病学会 編・著: 患者さんとその家族のための
糖尿病治療の手びき改訂第56版 p.24 南江堂 2014

糖尿病神経障害

2型糖尿病患者さんの3割は発症から5~10年ほどで末梢神経に障害が起こり始め、糖尿病になっている期間が長いほどその割合は高くなります。

日本糖尿病学会 編.糖尿病専門医研修ガイドブック
改訂第5版.診断と治療社2012:15

重症化すると、足先や手に壊疽(えそ:組織崩壊して腐ること)を起こす原因となります。以下のような兆候に注意しましょう。

糖尿病網膜症

目の網膜には毛細血管が網目状に張り巡らされています。血糖値が高い状態が続くと毛細血管が詰まるなどして網膜への酸素や栄養分の供給が不足して、糖尿病網膜症を起こします。初期には自覚症状はほとんど現れませんが、糖尿病を治療しないでいると、5年間で10%、10年間で30%、15年間で50%、20年間で70%に網膜症が発症することが知られ、進行すると失明に至ることもあります。早期発見および早期治療が重要で、糖尿病と診断された場合は眼科での定期的な検査を継続する必要があります。

参考:日本糖尿病学会 編・著: 糖尿病治療ガイド
2014-2015 p.76 文光堂 2014
日本糖尿病学会 編・著:患者さんとその家族のための糖尿病治療の手びき改訂第56版, p.59, 南江堂 2014

初期(単純網膜症)
網膜の血流が悪くなりはじめ、毛細血管の一部が腫れたり、血管の壁から血液が染み出したりします。自覚症状はありません。血糖コントロールにより、改善する可能性もあります。

中期(増殖前網膜症)
血管が詰まって、網膜の一部に血液が流れなくなります。網膜が腫れる網膜浮腫などが起きてくることもあります。自覚症状はありませんが、視力が低下する場合もあります。

終期(増殖網膜症)
血管が詰まって血液が届かなくなった部分に酸素や栄養を届けようとして、新生血管が伸びてきます。新生血管はもろく出血しやすいため、網膜の表面や眼球の内部に出血してしまうこともあります。視力の低下や飛蚊症(視界に虫のような小さな点が見える)が起こってきますが、自覚症状がない場合もあります。網膜剥離や眼底出血、硝子体(しょうしたい)出血を起こし、高度の視力低下に至ることもあります。

日本糖尿病学会 編・著: 糖尿病専門医研修ガイドブック改訂第6版, p.275, 診断と治療社 2012

糖尿病腎症

腎臓の糸球体は尿を作る重要な部位であり毛細血管が密集しています。血糖値が高い状態が10~15年間続くと次第に毛細血管が障害され、血液の濾過(ろか)機能が障害され、糖尿病腎症を発症するといわれています。進行すると腎不全を起こし、透析が必要になります。糖尿病腎症は、わが国における維持透析(血液透析・腹膜透析)導入の原因疾患の第1位であり、患者さんの数は年々増加しています。高血糖が続いて細小血管が障害されると、初めは微量アルブミン尿といって尿にごくわずかなタンパク質が漏れ出し(早期腎症)、進行すると次第にタンパク質の量が増えていき、顕性タンパク尿といわれる状態になります(顕性腎症)。さらに進行すると腎不全となり腎臓が働かなくなって透析治療が必要になります。

日本透析医学会統計調査委員会 図説 わが国の慢性透析療法の
現況 2011年12月31日現在

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